越前打刃物の種類図鑑|包丁9種と鎌・鉈・刈込鋏を形と写真で見比べる

結論: 越前打刃物(福井県越前市)は、包丁だけの産地ではありません。台所の包丁なら、両刃の牛刀・三徳・菜切・文化・ペティ・筋引と、魚や野菜の細かい仕事に使う片刃の出刃・柳刃・薄刃。台所の外では、鎌・鉈(なた)・刈込鋏も昔から作られてきました。もともと産地の名を広めたのは鎌です。このページでは、それぞれの形を同じ縮尺の図で並べ、何に使う道具かを説明し、タケフナイフビレッジの売り場と資料館で実際に見たものを写真で紹介します。

越前打刃物の包丁9種を同じ縮尺で描いた図:牛刀・三徳・菜切・文化・ペティ・筋引・出刃・柳刃・薄刃
このページで取り上げる包丁9種を、同じ縮尺で描いたもの。長さは一般的な大きさの目安で、実際の形は作り手ごとに少しずつ違います。

2026年11月の日曜日に、タケフナイフビレッジを訪ねました。写真はすべて、ビレッジの売り場と資料館で私が撮ったものです。ここで紹介する包丁を料理で使ったわけではないので、使い心地の評価ではなく、形と用途の案内です。

越前打刃物は包丁だけではない

ビレッジのパンフレットによると、越前打刃物の主な製品は、包丁・鎌・鉈・刈込み鋏・鍬(くわ)です。その幅の広さは、資料館の壁に並ぶ板の展示を見るとよく分かります。板ごとに、刃物の種類がまとめて掛けられています。

資料館の展示板2枚。左が両刃包丁、右が片刃包丁
タケフナイフビレッジ資料館の展示板。左が「両刃包丁の部」、右が「片刃包丁の部」。

両刃包丁の板を見ると、昔の台所の道具がいかに細かく分かれていたかが分かります。札には、寿司切り・ねぎ切り・西瓜切り・菓子切り・麺切り・キャベツ切り・レタス切り・白菜切り、それに畳屋包丁や、地方ごとに形の違う菜切が並びます。片刃包丁の板には、出刃・柳刃・蛸引・薄刃のほか、鮭切・らっきょう切・そば切り・貝裂、そして左利き用の出刃と柳刃もあります。片刃は片側だけを研いだ刃なので、左利きの人には左右を反対にした包丁が必要になるのです。

両刃と片刃のちがい

和包丁を見分ける最初の手がかりは、刃が両刃か片刃かです。

断面図:両側を研いだ両刃と、裏が平らで片側だけ研いだ片刃
切っ先の側から見た断面。左が両刃、右が片刃。

刃のつくり

越前の刃物の多くは、1枚の鋼でできているわけではありません。刃になる部分にかたい鋼(はがね)を使い、まわりをやわらかい鉄やステンレス(地金)で包むことで、折れにくく、研ぎやすい刃になります。

断面図:かたい鋼をやわらかい地金ではさむ割込み(三枚合わせ)と、裏側に鋼を合わせた二枚合わせ
よく見られる2つのつくり。鋼と地金をどう鍛接し、打ち延ばすのかは資料館の記事で紹介しています。

鋼を地金に鍛接する工程や、越前ならではの「二枚広げ」(2枚を重ねて打ち延ばす技法)については、越前打刃物はどう作られるのかに工程順にまとめています。

包丁の種類

牛刀 ぎゅうとう/Gyuto

牛刀 ぎゅうとう/Gyuto 両刃

向いている仕事: 肉・魚・野菜とほぼ何でも。いわゆる洋包丁のシェフナイフです。

よくある長さ: 180〜270mm。万能に使うなら210mmが定番です。

ひとこと: 三徳より刃渡りが長く、切っ先がとがっています。

三徳 さんとく/Santoku

三徳 さんとく/Santoku 両刃

向いている仕事: 家庭の料理全般。肉・魚・野菜の三つに使えることが名前の由来とされます。

よくある長さ: 165〜180mmほど。

ひとこと: 背が切っ先に向かって下がり、刃先が刃の線の近くにあるので、とがりすぎず扱いやすい形です。

菜切 なきり/Nakiri

菜切 なきり/Nakiri 両刃

向いている仕事: 野菜。刃がまっすぐなので、まな板に刃全体が当たり、前後に揺らさずに刻めます。

よくある長さ: 165mmほど。

ひとこと: 資料館の板には、地方ごとに形の違う菜切がいくつも並んでいます。

文化包丁 ぶんか/Bunka

文化包丁 ぶんか/Bunka 両刃

向いている仕事: 三徳と同じく家庭の料理全般。角ばった切っ先で、細かい作業もしやすい形です。

よくある長さ: 165〜180mmほど。

ひとこと: 切っ先を斜めに落とした形ですぐ見分けられます。売り場ではダマスカス模様の文化包丁を見かけました。

ペティナイフ Petty

ペティナイフ Petty 両刃

向いている仕事: 果物の皮むき、飾り切り、下ごしらえなど、大きな包丁では扱いにくい小さな仕事。

よくある長さ: 120〜150mmほど。

ひとこと: 牛刀か三徳にペティを1本足すと、たいていの台所はまかなえます。

筋引 すじひき/Sujihiki

筋引 すじひき/Sujihiki 両刃

向いている仕事: ローストビーフやハム、魚の柵などを、長い刃でひと引きに切り分ける仕事。

よくある長さ: 240〜300mmほど。

ひとこと: 牛刀より幅が細く、食材に触れる面が少ないので、引き切りがなめらかです。

出刃 でば/Deba

出刃 でば/Deba 片刃

向いている仕事: 魚をおろすこと。頭を落とし、骨を断ち、身を切り分けます。

よくある長さ: 105〜210mmほど。小魚用の小出刃もあります。

ひとこと: 背が厚く重い包丁です。魚の骨のための道具で、肉の骨を叩き切る包丁ではありません。

柳刃 やなぎば/Yanagiba

柳刃 やなぎば/Yanagiba 片刃

向いている仕事: 刺身。長い刃でひと引きすると、角の立った、つやのある切り口になります。

よくある長さ: 240〜300mmほど。

ひとこと: 先が四角い「蛸引(たこひき)」は、関東で使われてきた刺身包丁です。

薄刃 うすば/Usuba

薄刃 うすば/Usuba 片刃

向いている仕事: 桂むきやせん切りなど、和食の細かな野菜仕事。

よくある長さ: 165〜210mmほど。

ひとこと: 見た目は菜切に似ていますが、片刃で、研ぎ方も職人の道具の扱いになります。

売り場で見た包丁

タケフナイフビレッジのショップには、加盟する工房の包丁が並んでいます。形のちがいを実物で見比べるには、うってつけの場所です。

色鮮やかな柄のダマスカス模様の牛刀・三徳・菜切
ダマスカス模様の包丁。中央が菜切、その左右に牛刀と三徳。
木の柄の槌目仕上げの包丁4本
槌目(つちめ)仕上げの包丁。札には「SPG2 牛刀210mm」のように、鋼材と種類が書いてあります。
和柄のペティ・三徳・菜切・牛刀
和柄(わえ)の包丁。小さなペティから、菜切、牛刀まで。
切っ先が斜めのダマスカスの文化包丁
右が文化包丁。斜めに落とした切っ先が目印です。
赤い箱に入った片刃の出刃包丁
赤い箱に入った片刃の和包丁。ケースの札には「片刃」とあります。

仕上げと鋼材

同じ形の包丁でも、仕上げで見た目はがらりと変わります。よく見かけるのは次の4つです。

赤い柄の黒打ちの小さな包丁と「野菜収穫包丁」のパッケージ
黒打ちの「野菜収穫包丁」。越前ではいまも農作業用の刃物が作られています。

見た目より大事なのが鋼材です。白紙・青紙などの炭素鋼(はがね)はよく切れますが、濡れたままにすると錆びます。ステンレス鋼は手入れがずっと楽です。そのステンレス鋼の代表格は、地元の越前市で作られています。越前市の鋼材メーカー、武生特殊鋼材は、刃物鋼として**V金10号(VG10)やスーパーゴールド2(SG2)**を挙げています。どの鋼材でも、使ったら手で洗ってすぐ水気をふき取り、食洗機には入れないのが基本です。

売り場に並ぶ番手違いの砥石
売り場の砥石。和包丁は、砥石で研いで使う道具です。

台所の外の刃物:鎌・鉈・刈込鋏

越前の鍛冶の名を最初に広めたのは、農具でした。ビレッジのパンフレットによると、全国を回って漆をかく職人が越前の鎌を持ち歩き、各地の形の注文を持ち帰ったそうです。歴史と数字は資料館の記事にまとめています。

資料館の展示板3枚:刈込鋏・鉈・約20種類の鎌
資料館の「刈込鋏の部」「鉈の部」「鎌の部」。鎌の板だけで20ほどの形が並びます。

鎌 かま/Kama 農具

使い道: 草刈りや稲刈り、草むしり。

ひとこと: 仕事や地方によって形が変わることは、展示板を見ると一目瞭然です。資料館には鎌専用の15工程の展示もあり、越前の鎌には「廻し鋼付け」という技法が使われてきました。

鉈 なた/Nata 山の道具

使い道: 薪割り、枝打ち、やぶの手入れ。

ひとこと: どの包丁よりも厚く重い刃物です。展示板には、先が四角いもの、鉤(かぎ)のあるもの、とがったものなど、いろいろな鉈が並んでいます。

刈込鋏 かりこみばさみ/Karikomi-basami 庭の道具

使い道: 生け垣や植木の刈り込み。

ひとこと: 展示板には、枝切鋏や芝刈鋏も並んでいます。

長い木の柄の鎌2本
売り場で売られている鎌。

伝統の技と新しいデザイン

越前の作り手は、デザイナーとの仕事にも取り組んできました。1982年、のちにビレッジをつくる職人たちが、福井県出身の工業デザイナー川崎和男氏と組み始めます。いまの売り場には、柄まで一体のステンレスの包丁や、折りたたみナイフ、アウトドア用のナイフも並んでいます。

柄に穴のあいた一体型ステンレス包丁が「artus」の展示板に並ぶ
柄まで一体のステンレスの包丁(展示名「artus」)。
折りたたみナイフ、折りたたみフォーク、アウトドアナイフ
折りたたみナイフ、折りたたみのフォーク、アウトドア用のナイフ。

どれを選べばいい?

こんな人は見てほしい種類
1本で何でもこなしたい牛刀(210mm)か三徳
野菜を切ることが多い菜切
小回りのきく2本目がほしいペティ
魚を丸ごとおろしたい出刃
刺身を引きたい柳刃
手入れを楽にしたいステンレス(V金10号、SG2など)
手入れをしても切れ味を優先したい炭素鋼(白紙・青紙)

和包丁が初めてなら、両刃でステンレスの牛刀か三徳から始めるのが無難です。片刃の包丁は、魚をおろす、和食の野菜仕事をする、と使い道がはっきりしてからで遅くありません。

実物を見に行くなら

いろいろな作り手の包丁を一度に見比べられるのが、タケフナイフビレッジのショップです。営業時間や見学工房、越前たけふ駅からの行き方はタケフナイフビレッジの見どころと行き方をどうぞ。

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通販で買うなら

現地に行けなくても、越前打刃物は通販で買えます。

通販で買うなら(楽天市場)

現地で見た品そのものではなく、楽天市場で買える越前打刃物と手入れ用品の例です。上の種類の順に、1種類につき1点ずつ並べました。私は使っていないので、使い心地の評価はしていません。価格・在庫・送料は各ショップのページで確認してください。

牛刀|カトウ打刃物製作所 義実作 210mm

一心刃物

牛刀|カトウ打刃物製作所 義実作 210mm

肉も野菜も切れる両刃の万能包丁。鋼材は青紙スーパー、仕上げは梨地。

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三徳|増谷刃物製作 訓平作 170mm

一心刃物

三徳|増谷刃物製作 訓平作 170mm

越前打刃物の三徳包丁。刃はV金10号の積層(ステンレス)、刃渡り170mm。

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菜切|越前数馬作 村雨 165mm

日用品卸問屋 火の鳥

菜切|越前数馬作 村雨 165mm

刃がまっすぐな、野菜を刻むための両刃の包丁。白紙二号鋼の黒打ち、八角の柄。

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文化|片山打刃物 片山雄太作 165mm

一心刃物

文化|片山打刃物 片山雄太作 165mm

切っ先を斜めに落とした形。ダマスカス模様のV金10号(ステンレス)、欅の柄。

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ペティ|カトウ打刃物製作所 義実作 150mm

一心刃物

ペティ|カトウ打刃物製作所 義実作 150mm

果物の皮むきや細かい作業に使う小型の両刃包丁。スーパーゴールド2(粉末ステンレス)の黒染ダマスカス。

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筋引|片山打刃物 240mm

一心刃物

筋引|片山打刃物 240mm

肉や魚を引いて切る細長い両刃の包丁。スーパーゴールド2にニッケルダマスカス。

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出刃|越前数馬作 黒打 165mm

日用品卸問屋 火の鳥

出刃|越前数馬作 黒打 165mm

魚をおろすための厚い片刃の包丁。白紙二号鋼、鎬(しのぎ)のある柄。鋼の包丁は使ったらすぐ水気をふき取ります。

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柳刃|越前数馬作 270mm

日用品卸問屋 火の鳥

柳刃|越前数馬作 270mm

刺身を引くための長い片刃の包丁。鋼材はステンレスのVG10。

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薄刃|越前数馬作 角型 210mm

日用品卸問屋 火の鳥

薄刃|越前数馬作 角型 210mm

かつらむきなど、野菜の細工に使う片刃の包丁。白紙二号鋼の霞仕上げ。

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鎌|玉日本 手打草刈鎌 195mm

日用品卸問屋 火の鳥

鎌|玉日本 手打草刈鎌 195mm

草刈り用の手打ちの鎌。刃は白紙二号鋼、柄の長さは390mm。

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包丁を研ぐための中砥(#1000)と、研ぐときに使う道具のセット。

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イチョウ材の木のまな板。日本製。

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